以前、長野県の珍文化として「秘密のケンミンSHOW」でも紹介されていた、長野県中学生の学校登山。正式には学校集団登山といいます。
学校登山がどんなものか知らない方もいらっしゃると思いますが、長野県ではほとんどの学校で中学2年生のときに1泊2日程度の登山をします。それも2000~3000m級の山をです。これを中学校集団登山と言います。
長野在住の他県出身者の僕としては、面白い文化だなーと思っていましたが、長野県民にとっては当たり前の文化なんですね。私も学校集団登山にもうそろそろ参加する年頃の子どもを持っているので、長野県中学校の全部で行われているのか?どんな山に登っているのかなどを調べてみました。
「長野県中学校集団登山動向調査」のまとめ
調べてみました。と言っても、長野県山岳総合センターというところで、集団登山についての動向調査が行われていましたのでそちらからの紹介になります。
参考 長野県中学校集団登山動向調査 – 長野県山岳総合センター
集団登山の実施状況
まずは、どれだけの中学校で集団登山が行われているかです。
年 | 調査数 | 計画有 | 計画無 |
H25年 | 196校 | 170校 (87%) | 26校 (13%) |
H22年 | 198校 | 178校 (90%) | 20校 (10%) |
H18年 | 189校 | 171校 (90%) | 18校 (10%) |
H16年 | 197校 | 175校 (89%) | 22校 (11%) |
最新の調査が平成25年と若干古いんですが、学校集団登山を行っている学校は全体の約9割程度。計画有としているのは、登山計画はあったものの、天候の理由などで中止となったものも学校集団登山実施校として含んでいるためです。
学校集団登山を行っている学年は8割近い学校で2年生です。
全員参加させたいという思惑はあるものの、健康状態や家庭の事情等で計画段階から不参加の意思を表明している人も若干ですがいるようです。
登山のスケジュール
ほとんどの学校が1泊2日でスケジュールを組んでいます。日帰りの学校は9校、2泊3日の学校は3校です。
また、大多数の学校は夏休み前か夏休み中ですが、夏休み明けに計画をしていた学校もあり、それは170校中27校です。
学校集団登山で登る山
次に、どの山に学校集団登山で登っているのでしょうか?これも同調査報告書から抜粋します。
学校数 | 山名 | 標高 | |
1 | 37校 | 硫黄岳周辺 | 2,760m |
2 | 33校 | 乗鞍岳 | 3,026m |
3 | 26校 | 唐松岳 | 2,696m |
4 | 18校 | 木曽駒ケ岳 | 2,956m |
5 | 10校 | 燕岳 | 2,763m |
6 | 9校 | 爺が岳 | 2,670m |
6 | 9校 | 御嶽山 | 3,067m |
8 | 6校 | 常念岳 | 2,857m |
9 | 5校 | 仙丈ケ岳 | 3,033m |
10 | 3校 | 西穂高岳 | 2,909m |
10 | 3校 | 赤岳 | 2,899m |
10 | 3校 | 岩菅山 | 2,295m |
13 | 2校 | 奥穂高岳 | 3,190m |
13 | 2校 | 苗場山 | 2,145m |
– | 7校 | その他 |
その他の山には、南アルプス烏帽子岳、倉沢岳、熊伏山、小河内岳、美ヶ原、苗場山(2校)、竜王山・焼額山、富士山が挙げられていたようです。「硫黄岳周辺」には、硫黄岳・根石岳・天狗岳・箕冠山・横岳・茶臼山・夏沢峠・茶臼山等北八ヶ岳周辺が含まれ、「唐松岳周辺」は、丸山ケルンまで登った学校も含まれます。
また、合計数が合わないのは複数の山を目的としていた学校があったからのようです。
一番高い山は奥穂高岳(3,190m)です。2校ありますが、これは松本市の大野川中学校と安曇中学校。いずれも旧安曇村にある中学校ですね。生徒数も少ない学校なので、可能なのだと思います。
過去の調査(平成4年)からの推移も分析されているので、最近人気の山と集団登山で登られなくなってきた山をまとめてみます。
最近人気の山
最近人気なのは平成25年調査でも1位に輝いた硫黄岳周辺。そして乗鞍岳です。乗鞍岳は比較的簡単に登れる山なので、みんなで登るという趣旨に合致しやすいのかもしれません。
硫黄岳周辺の山は平成4年調査からは13校の増加。割合にすれば5割増です。
最近不人気の山
最近不人気なのは、木曽駒ケ岳と燕岳が顕著に割合が減っています。木曽駒ケ岳は4割強も減っていますし、燕岳に至っては7割弱減少しています。
燕岳の減少については僕も知り合いに理由を聞いたことがあり、一本道の長い登山道で大渋滞を引き起こしてしまうことによる問題が長年続いていたからのようです。また、上の表にある山の中では難易度の高い山でもあります。ですので30校近く登っていた学校も今は10校となっています。
木曽駒ケ岳についてはなぜなんでしょう?受け入れ先の山荘が少ないという話は聞いたことがありますが、それが理由なんでしょうか。また、平成25年の調査なので御嶽山が9校となっていますが、ご存知のとおり平成26年には御嶽山噴火の災害がありました。そして現在も9合目より上は立ち入り禁止の措置が取られています。
現在はたぶん御嶽山登山をしている学校は0校なんでしょうね。振り替えるとすれば、木曽駒ケ岳か乗鞍岳あたりでしょうか。
まとめ
その他、もっと詳細な調査結果が「長野県中学校集団登山動向調査」ではなされています。読んでいると、親の意識の変化。学校を取り巻く環境の変化により、学校集団登山を続けるのもなかなか大変なことなんだなということが分かります。
また、木曽駒ケ岳とこの記事では書いていますが、調査報告書では「西駒ケ岳」と記載されています。長野県民は西にある駒ケ岳のことを西駒ケ岳(木曽駒ケ岳)、東にある駒ケ岳を東駒ケ岳(甲斐駒ヶ岳)と一般的に呼ぶんですね。
長野県のホームページでは、学校登山について中学校(中学生)が作ったホームページのコンテスト結果が載っています。これを見ると、学校集団登山が実際にどのようなスケジュールや内容で行われているかがよく分かります。